
風から生まれた / 2025 Sony Imaging Gallery
カメラを持って外に出たとき、私が心惹かれたものは海原に揺れる月の光や、風にそよぐ草花、川のせせらぎの音や、木漏れ日で生じる陰影だった。それらは天候や生き物との関係によって姿形や音を変え、常に賑やかで、ゆるやかで、自由だった。絶妙なバランスの世界。お互いがお互いを見て、聞いて、呼応している。変化し循環する様を静かに眺めているうちに、私はその中に溶けていくような感覚があった。
私はこれを作品にしたいと思った。
量子力学ではこの感覚を「ゆらぎ」と呼ぶそうだ。光のゆらめきも、風の強弱も、私たちの鼓動や呼吸も「ゆらぎ」の性質を持っている。こうしたゆらぎの性質に脳が呼応したとき、私たちは心地よさを感じるのだという。
そして、私たちが住む宇宙も、その起源にはそよ風のような「ゆらぎ」があり、そこから宇宙が生まれたと考えられている。
同じ性質を共有する私たちは、風から生まれた宇宙の子どもだと言えるかもしれない。
映像:5分51秒
音楽:MUUA「shape」
制作:2025年
「この揺りかごを -If I could-」
金子 直道/シノブ・キイ/升谷 絵里香 映像作品展
2025年2月7日(金)-20日(木)
ソニーイメージングギャラリー銀座
https://www.sony.co.jp/united/imaging/gallery/detail/250207/